第11話『デジヴァイス、始動』


結局、仮契約の恩恵である召喚は成功した。

だが、魔力供給はイルゼの体は受け付けなかった。

魔力を送ろうとしてもイルゼの体に届いた瞬間に霧散してしまうのだ。

そして、デジヴァイスは調査の為に詠春が調査団を作り、調査させた。

翌日には結果が出るだろうということだ。

詠春は、イルゼのアーティファクト、『韋駄天』の説明や訓練を麻耶に託し、刹那を連れて呪術協会からちょうど、町とは反対の方向の山道に向かって行
った。



詠春と刹那は二人だけで山道を歩き続けた。

途中からは整備のされていない獣道を通り、詠春が刹那の歩く邪魔にならないように枝などを持っていた三本の刀の一本である、脇差で切っていった。

詠春は三本の刀を持ってきていた。

一つは先程から詠春が枝を切り払うのに使っている何の変哲も無い脇差。

もう一つは、まるで儀式に使うかのような豪奢な短刀。

そして、刀としては長すぎる…かの最強と名を轟かせた大剣豪の好敵手として祭られた男の物干し竿と呼ばれた太刀の如く長い長剣。鍔は無く、ただ、
柄には『夕凪』と刻印されていた。

それから、何時間も歩いた先で、唐突に道が開け、そこには何故か鳥居があった。

「ここは…」

詠春はキョトンとしている刹那に微笑みかけた。

「これは私が施した結界の入り口だよ。一度言った事のある者で、ここに来る資格があると、私が判断した者のみがここを発見出来る」

「…ここが」

刹那の肩が震えた。

母と父の墓。刹那は足が動かなくなってしまった。

その間に、詠春は長い呪文を唱えた。

それは、刹那を資格ある者と認定させる呪文だった。

詠春が呪文の詠唱を終え、剣印で五方星を描き、胸元で一言呟くと、刹那の目に、鳥居の向こう側に林ではなく、さらに広場が続いているのが見えた。

詠春が歩き出すと、刹那が動けずに居るのに気が付いた。

詠春は刹那に歩み寄り、頭を撫でた。

「私がついているよ」

安心させるように微笑むと、刹那は僅かに潤んでいた目を袖で拭い詠春に頷き返した。

「行こう」

「はい…」

鳥居を潜ると、そこには大理石の墓石が二つ並んでいた。

一方には、『桜咲 美鈴』と刻まれ、もう一方には、『白王』と刻まれていた。

「桜咲…みすず…はく…おう…」

「美鈴さん…それが君のお母さんの名前だよ。白王はお父さんの名だ」

「美鈴…お母さんと…白王お父さん?」

「そうだよ」

肩を震わせ、声を震わせる刹那に後ろから肩に手を置き微笑みながら詠春は言った。

「私は、少し鳥居の外に居るよ…」

そう言って、詠春は歩き去って行った。

後に残された刹那はノロノロと母と、父の墓石の間にしゃがみこみ、しばらくすると、鳥居の外に居た詠春にも聞こえるほどの大きな声で泣いた。

その泣き声を聞いて、詠春も一人、鳥居の近くの木に背を預け、涙を流した。

「美鈴さん…白王…。君達の…娘は…とても良い子だよ。どうか、見守って上げて欲しい…」

呟くようにそう言うと、詠春は顔を俯かせて、刹那の泣き声が止んでからもしばらくの間、目を瞑っていた。

詠春が戻ると、刹那は墓の間で眠っていた。

一瞬…、黒髪の美しい女性と、白い翼を持った、顔の上半分のみを白い鳥の面を被ったような屈強な男が寄り添いながら刹那を見守っているのが見え
た気がした。

だが、瞬きをした間に、それは消えていた。

幻覚だったのかもしれない。だが、詠春は、目を細めて、空を見やった。

すでに夕日の赤みを帯びた陽射しが木々の合間を縫うように降りてきていた。

詠春は防寒の結界を張り、刹那の頭を膝に乗せたまま起きるのを待った。

そして、刹那が目を覚ましたのは既に、月が真上に昇った頃だった。

「あれ…お母さん?…お父さん…?」

刹那は目を覚ますとキョロキョロと辺りを見渡した。

「お父さんと、お母さんに会えたのかい?」

詠春の言葉に驚いたように目を見開いた刹那は少したってから涙を一粒流しながら小さく言った。

「はい…」

「刹那君…君に渡したい物がある」

詠春はそう言うと、懐の豪奢な飾りの儀式刀を鞘から引き抜いた。

「ここで待っていてくれ」

詠春の言葉に戸惑いながら刹那は頷くと、後ろに下がった。

詠春は、美鈴の墓の前に立つと、儀式刀を墓の前の地面に刺した。

「おん・さらば・たぎゃた・はん・なまんな・のきやろみ・おん・きりきり・ばさらん・ざった・おん・ざさら・ばさら・たん・おん・らん」

懐から出した大量の符を宙に放り、呪文を唱える。

「おん・さらば・たぎゃた・はん・なまんな・のきやろみ・おん・きりきり・ばさらん・ざった・おん・ざさら・ばさら・たん・おん・らん」

「おん・さらば・たぎゃた・はん・なまんな・のきやろみ・おん・きりきり・ばさらん・ざった・おん・ざさら・ばさら・たん・おん・らん」

同じ呪文を三回、強力な封印式が徐々に解かれていった。

そして、突如、儀式刀から光が溢れ、儀式刀は崩れ去った。

代わりに、儀式刀の刺さっていた穴から、光が溢れ、そこから人振りの太刀が現れた。

それを手に取ると、詠春は刹那の元に歩み寄った。

「刹那君、これを」

「え?」

詠春は、漆黒の柄に赤い桜の刺繍があり、漆黒の鍔に小さな鈴の付いた太刀を刹那に手渡した。

「これは?」

「銘を『黒桜鈴華(コクオウリンカ)』と言う。君のお母さんが使っていた太刀だよ」

「お母さんが!?」

詠春の言葉に刹那の目は大きく見開かれた。

「刹那君、二刀流を学びなさい」

「二刀…流?」

「そう、君にはお父さんとお母さん、偉大な剣士だった二人の血が流れている。難しい技術なのは百も承知だ。だが、君ならきっと出来る。紅桜を振るえ
るまではコレで代用してくれ」

詠春はそう言うと、腰に差していた夕凪を刹那に渡した。

「!?長…これ!!」

それは、過去の大戦の折に詠春が共に駆け抜けた愛刀だった。

夕凪、神鳴流の力を遺憾なく発揮させる名刀中の名刀だった。

「刹那君に預ける。紅桜を自在に振るえるまで、それで木乃香を護ってくれ。」

詠春の真剣な眼差しに刹那は何も言えなくなった。

ただ、小さく頷いていた。

それから、歩いて屋敷に戻る途中、刹那が歩いたまま眠ってしまい、詠春がおんぶをして連れ帰った。

刹那に夕凪と黒桜鈴華を与えた事で動揺した者も居たが、反対する者はいなかった。

理解したのだ。関西呪術協会の長の神鳴流剣士としての後継が誰であるかを。

そして、夜は更けていった。

麻耶にイルゼの様子を聞いたり、デジヴァイスの調査報告を聞いたりで、詠春が眠ったのはすでに2時を回った頃だった。

翌朝は、刹那が詠春に恥ずかしがりながら御礼を言うと、詠春が頭を撫で、イルゼと木乃香が刹那に微笑みかけた。



お昼を回った頃、関西呪術協会の敷地の中にある林の近くで詠春が符を構え、呪文を唱えた。

「オン・マカソ・ギャバザラ・サトバ・ジャク・ウン・バンコク・ソラタ・ストバン、五属霊召喚」

すると、符が光を放ち、徐々に溶け落ち、地面に滴り落ちた光は突如巨大な塊になり、次の瞬間に赤、青、緑、茶、黄の色を持つ鬼が出現した。
これは、詠春の式神でそれぞれが、火、水、木、土、雷の属性を持つ。
詠春の視線の先にはイルゼが右手を手刀にし腰に当て、掌を上にした状態にし、左手は手刀を前面に構え、掌を下にした状態にした。
その背後で、木乃香はデジヴァイスを握り、刹那と共にイルゼの様子を見守っていた。

「どうだい?」

「全然、何も変化が起きない…」

「木乃香、デジヴァイスに何か変化はあるかい?」

詠春はイルゼから視線を外し、木乃香を見た。

「ううん、なんも変わった事あらへんよ」

不安そうにデジヴァイスを握る木乃香を見て詠春は困った顔をした。

「ううむ…、デジヴァイスの調査をしようにもどんな検査も謎のブラックボックスのみだからね…」

「戦いの場に出れば何かあるかと思ったんかでどな…」

イルゼもガックリした様子だった。

「やっぱり実際戦わないといけないかもしれないね」

「それで、ちゃんと動いてくれればいいんだけどな…」

デジヴァイスの検査が終了したのは今朝の事だった。事細やかに検査をしたのだが、まったくの空振りで、何もわからなかったのだ。詠春の提案で詠春
の式神と相対すればなにか起こるのではと思い、今に至るのだが…。

「都合も良いし、修行の成果を見せてもらおうか?」

「…いいねぇ。そういや、修行中も今も組み手ばっかで実戦なんざあの時以来だ」

「あの時…あれからどれ位君が成長したか…見せてくれるかい?」

「ああ、手加減は…いらないぜ」

「わかった、ただし…一体ずつでいいね?」

「おう!」

詠春が緑の鬼を指差し、イルゼにその指を勢いをつけて指を振った。

すると、緑の鬼はイルゼに向かって駆け出した。

「へっ!」

イルゼはパクティオーカードを取り出した。

刹那が墓参りに行っている間中使い続けたが、思いの外うまく乗りこなせた。

問題は、時間。

『韋駄天』は、使い手の体力を吸って動く。故に、スピードを出せば勢いよく体力を吸われ、飛行の高度によっても吸う力は変わる。高度を上げれば上げ
るほどに吸う力は上昇する。全速力を出しても韋駄天の能力で振り落とされる事は無い。だが、全速力を出せるのは今は1分が限界だ。それを過ぎれ
ば、韋駄天処か、イルゼ自身も動けなくなる。

高度も限界は地上100m、それ以上上げればその場で体力が尽きる。全速力を出せる高度は10mまで。

敵は5体、体力を温存させるのが良策…。

だが、元より実戦と言っても相手は詠春だ。これは倒すのが目的ではない。

どこまで戦えるかを見せる戦い。ならば、一体目だからと力を出し惜しみして負ける訳にはいかない。

「アデアット!」

イルゼの持つパクティオーカードは光の粒子となり、その形状が一瞬でサーフボードの様な姿へと変貌した。

「ギア1、セット!」

ボードの後ろに付いている羽の様な一対のパーツの間にある、青い石に『1』の文字が浮かび上がった。

すると、韋駄天は地面から50cmくらいの高さで浮かんだまま前進した。

「おらっ!」

イルゼは右足で地面を蹴り、韋駄天に跳び乗った。

「ギア3、セット!」

一気に韋駄天は加速し、風を切りながら緑の鬼から距離を取って上空8mの位置まで飛んだ。

韋駄天のギアは今使えるのは3までだ。

麻耶がアーティファクトの説明をしてくれた時、アーティファクトは持ち主の力量があがるほどにその力を引き出せるらしい。

今のイルゼの力量では最高速度はどうあがいてもギア3以上は無理だった。速度は成人男性の全力疾走レベル。力量が上がれば、速度も時間も上が
るらしい。

イルゼは体力が徐々に吸われていくのを感じた。

「ナイト・オブ・ファイヤー!」

イルゼは指先から鞠程度の大きさの炎を出現させて緑の鬼に放った。

だが、緑の鬼は両手をパンッと叩いた。すると、地面から巨大な蔦が鬼を護るように生えだした。

「何!?」

一瞬呆気に取られたイルゼに向かい、緑の鬼は右手を突き出した。すると、今度は右手の掌に突如球根のような物が生え、それがいきなり開いたかと
思うと、そこから強い勢いの黒い物体が飛び出した。

「うおっ!?」

なんとかギリギリで躱したが、それで終わりではなった。

鬼の放ったのは、アメフトのボール並みの大きさの硬い種だった。

『木』の属性の鬼。イルゼは急いで急降下しながら地面に降り立つと、韋駄天を盾にした。

アーティファクトは壊れても再度呼び出せば復活する。

そして、アーティファクトはその物自体に防御の魔法が施されている。

韋駄天で攻撃を受けながら、イルゼは残る体力を振り絞った。

韋駄天に乗っていたのはほんの数十秒程度。

体力はまだ、底を尽きてはいない。

「ナイト・オブ・ファイヤー!」

イルゼは今度は両手の指全てに鞠程度の大きさの火の玉を出現させた。

それが、イルゼに出せる炎の限界だった。

イルゼは炎を一つに纏めた。

「木なら、焼くだけだ!」

集まった火はサッカーボール並みの炎になった。

「ナイト・オブ・ファイヤー!いけぇ!!」

韋駄天の上部に足を掛け飛び上がった。種の弾丸を紙一重で躱していく。

それこそが、東京での修行の成果。

戦う技や、攻撃の強さではない。

攻撃をよく観察し、それを避けれるだけの身体の支配力。即ちは回避能力。

空中とはいえ、わずかに体を捻る事くらいは出来る。それで十分。

一瞬の種の発射される合間に、纏められたナイト・オブ・ファイヤーの炎が鬼に襲い掛かる。

炎が到達する一瞬早く、鬼の手からは種が発射され、避けることが出来ずに直撃を食らってしまったが、実際には手加減をしていたのだろう。

詠春の鬼の種の弾丸は、柔らかく、ダメージは殆ど無かった。

そして、詠春の鬼は炎に包まれた。

ただの炎ではない。デジモンのエネルギーで編まれた炎は、木の属性の鬼を容易に飲み込んだ…かに見えた。

だが、鬼は蔦を自身の体に絡み付かせると、突如、真っ二つに裂けた。

そして、そこからは焦げ一つ無い鬼が飛び出した。

「なんだ!?」

イルゼの言葉に答えを返したのは詠春だった。

「木の属性が司るのは、再生の力。一気に燃やし尽くさない限り、何度でも復活する」

「なっ!?」

イルゼが驚愕した瞬間、その隙を付いて、鬼が蔦を伸ばしてきた。

「ちっ!」

舌打ちをしながら左から迫る蔦に向かって駆け出した。

そして、右足に力を集中させる。

「ダダダダキック!」

一撃の攻撃に3回分の攻撃回数が加算され、蔦が動きを止めた。

反動で後ろに飛ばされたイルゼは背後から迫り来る蔦に足を乗せ、そのまま飛び上がった。

そして、両手から炎を生み出した。

「ナイト・オブ・ファイヤー!」

炎の塊が蔦を蹂躙する…が!

すぐに背後から新しい蔦が地面から飛び出し、イルゼを拘束してしまった。

「なっ!?」

すると突然、背後の木乃香達の居る場所から凄まじい光が迸った。





イルゼの戦闘が始まった直後、木乃香はデジヴァイスを握り締めて戦いを見守った。

手に入れたばかりの力で上空から攻撃するイルゼに木乃香と刹那は感嘆した。

しかし、詠春の鬼は強く、地面に降下させられ、イルゼはアーティファクトを盾にしながらイルゼが最大の攻撃を加えた。

その戦いを見ながら、木乃香は少しずつ頭の中で迷いが生じた。

自分を護る…そう言ってくれた二人。今更な事かもしれない、しかし…。

木乃香はそれまで何不自由なく過ごして来た。そこに突然、イルゼがやって来て魔法を知り、自分が護られる存在だと言われた。刹那やイルゼが自分を
護ってくれると言った時、純粋な喜びを得た。

だが、目の前の戦いを見て、苦戦するイルゼを見ながら迷いが生じた。

自分は護られるだけで良いのか?…と。

木乃香が教わった呪文は自己防衛の術に過ぎない。

護ってくれる存在に一方的に任せる自分に迷いを覚えたのだ。

微かに、ある思いが生まれた。

その思いは、目の前の戦いを見るうちに大きくなり続けた。

それは、実際には数分もかからぬ攻防。

イルゼが蔦に捕まった時、咄嗟に、木乃香は駆け出していた。

そして、まるで、木乃香の戦う意思に反応するかのように、デジヴァイスが輝き始めた。

そして、左側面に嵌めこまれた漆黒の小さな石版に文字が浮かび上がった。

震・坎・兌・離・震・坎・兌・離・震・坎・兌・離・

次々に浮かび上がる文字に木乃香は当惑した。

「なんやの…これ…」

木乃香はしばらくその文字を見続けていると妙の授業を思い出した。

即ち、八卦。

古代中国から伝わる易における8つの基本図像。

坤 坎 巽 

震    兌

艮 離 乾


木乃香は、石版の文字の方向に、デジヴァイスを振ってみた。

「震…坎…兌…離」

右、上、左、下の準にデジヴァイスを振ると、一方向に振るたびに、デジヴァイスの先に付いている宝石が光を発した。

その瞬間、イルゼの体に突如、力がみなぎった。

「ぐおおおおおおお!!」

イルゼは蔦を引き千切り、地面に降り立った。

「凄いぜ木乃香!!今のってなんなんだ?」

イルゼは驚いたように木乃香を見た。

それは刹那や詠春も同じだった。

「わからへん…いきなりデジヴァイスが光ったと思ったら、石版に文字が…八卦の文字だと思ってその通りに振ったら」

「ならもっと!」

「え?」

「もっと大きく振って見てくれ!!」

「ふぇ?!…わ、わかったで!」

イルゼの声に驚きながら木乃香は再び、デジヴァイスを正眼の位置に構えた。

「震、坎、兌、離!」

すると、さっきよりも強い光が宝石から迸り、その光がイルゼに力を与えた。

イルゼは緑の鬼が再び伸ばした蔦を両手で掴んだ。

「もっとだ、もっと!」

「震、坎、兌、離!」

印の輝きを受け、イルゼは蔦を地面に叩きつけてその勢いで上空に飛んで後ろに下がった。

「もっと大きな声で!!」

「震!坎!兌!離!」

すると、さっきよりもはっきりと緑色の閃光がイルゼに届き、イルゼの体も僅かに緑色に輝いた。

「おおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!」

飛んできた種を次々に躱して行く。

目で追えても、それまでのイルゼならば避け切れない速度であったのにだ!

「もっと強く!!」

「行くで!!イルゼ!!!」

「来い、木乃香!!!」

木乃香の叫びにイルゼは種を避けながら叫び返した。。

「震!!」

大きく右方向にデジヴァイスを切ると、宝石から宙空に『震』の文字が現れ、消えた。

「坎!!」

そして、今度は『坎』の文字。

「兌!!」

『兌』の文字。

「離!!」

そして、一気にデジヴァイスを振り下ろすと、『離』の文字が消えた直後に、『震』・『坎』・『兌』・『離』の緑色の光の文字がイルゼの背中に当たった!

すると、緑色の輝きがイルゼの両手に集まった。

「うおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!ナイト!!」

両手を合わせ、その両手の掌にイルゼ自身の身長の半分程もある巨大で真っ赤な炎が膨れ上がった!

「オブ…ファイヤアアアアアアアアアァァアァアアァアアアア!!!!!」

イルゼの叫びと共に、イルゼの両手から放たれた巨大な炎は緑の鬼に直撃した。

すると、炎は爆発し、緑の鬼は一気に炎上した。

その強さは、イルゼの自力で出す炎の倍の威力があった。そして、鬼が完全に消滅したのを見た後、イルゼは気を失った。

突然、強すぎる力を使った為に体が驚いたのだ。

その後、刹那と木乃香がイルゼに駆け寄り、詠春が抱っこしてイルゼを屋敷に連れ返した。

ただ、デジヴァイスの力の一端を見た三人はいずれもどこか呆けた表情をしていた。





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