第51話『さようなら』

「あれは、1948年の12月の事じゃった。彼奴はある事件を捜査しておるのを聞いた事があったのじゃ」

近右衛門の言葉に、エヴァンジェリンが眉を顰めた。

「ある事件?」

すると、近右衛門は「うむ」と頷き答えた。

「当時の儂は、それがどんな事件だったのかをあまり詳しくは知らなかったのじゃ。じゃが、彼奴が戻って来て、事件を知った。そして、此度のさよちゃん
の事件を通し、確信した。彼奴が追っていた事件は、麻帆良山で嘗て研究されていたファントモン…いいや、デジモンを召還する為の研究だったのじゃ」

「デジモンを召還する為の研究?」

「うむ、間違いないじゃろう。そして、その実験は…」

「待て!!」

イルゼの質問に、近右衛門が答えようとしたのをエヴァンジェリンが止めた。
鋭い眼差しを近右衛門に送り、口を塞いだ。

「どうしたん?おばあちゃん」

木乃香が首を傾げると、エヴァンジェリンは首を横に振った。

「なんでもない。魔法使いの研究にはあまり子供向けとは言えない内容が多くてな」

その言葉に、木乃香とイルゼは少々不満気にだが頷いた。
だが、近右衛門はエヴァンジェリンの真意に気付き、己の失態に胸中で舌打ちした。
この事は、まだ明かされるべき時では無い。
エヴァンジェリンと近右衛門はそう考えたのだ。
時が来るまでは…。

「とにかくじゃ。矢部の妻であり、儂やさよちゃんにとっても親友の一人じゃった…。さよちゃんも覚えているじゃろ?ティファニー・エバンスの事を」

「うん…」

さよは近右衛門の言葉に悲しげに頷いた。
当然だろう、既に死んでいると言われたのだから。
だが、唐突にイルゼが口を開いて一同がギョッとした。

「なぁ…、矢部先生とその…ティファニーさんとの間に子供が居たって言ったよな?アリスって。それ、本当にその子の名前で合ってるのか?」

淡々と喋るイルゼに驚きながら、キヨは首を横に振った。

「いいえ、もう随分昔の事だから…。でも、もう少し長かったと思うわ」

その言葉に、イルゼは「じゃぁ…」と言った。

「その子の名前はアリステアじゃないか?」

その言葉に、エヴァンジェリンと木乃香はギョッとした。
そして気が付いた。
だが、木乃香は言った。

「でも、フェイには両親が居るって!!」

その言葉に、キヨは目を丸くした。

「そう、そうよ!!確か、あの子の名前はフェイ・アリステア・エバンス。そうよ思い出したわ。本当は日本の名前も付けたかったのだけど、当時は日本は
外国にはあまり受け入れられなかったから全てティファニーさんの母国の英国の名前にしたって言ってたわ。…どうして…知ってるの?」

キヨの言葉に、近右衛門もようやく気が付き、「馬鹿な…」と唖然とした。

「どういう事だ…。何でフェイが…?1948年だと?だけど、あいつが両親の事を話す時何時だって…」

そう独り言の様に呟きながら、イルゼは核心に近づいているのを感じた。
そして、思い出していた。

「フェイが女の子の制服を着て居たのは、今でこそ本人の意思もあるが、最初は両親に着せられたって…。それに、両親の事を話す時だって…。あいつ
の両親が矢部先生とティファニーさん?それなら…、でも何でだ?何で、40年以上も前に…」

そして、イルゼは、ハッとなって近右衛門を見た。

「なぁじいちゃん!!さっき言ってたよな。フェイが死んだって!!それどういう事だ!!」

イルゼの殺気すら孕んだ口調に、近右衛門は驚きを隠せなかった。
だが、イルゼの思いに気付き話し始めた。

「1948年の事じゃ、矢部が調査していた事件は…魔法世界で儂達が奉仕していた国の暗部だったのじゃ」

「暗部?」

木乃香が聞いた。

「うむ、先程も言ったがの。イルゼが七不思議を調べる上で、麻帆良山の実験施設で多くの人体実験をしていたと言うのを調べたじゃろ?」

「ああ…」

イルゼは頷いた。

「それと同じ事が繰り返されていたのじゃ」

「なんだって!?」

イルゼは仰天した。
そして、木乃香やさよ、キヨ、レオルモンも絶句した。

「そして、矢部は儂達が奉仕していた国の暗部を暴いてしまい、家族全員…実験の道具にされたのじゃ…」

「な!?」

これにはエヴァンジェリンも言葉が出なかった。
そして、イルゼ達も目を見開いて喋る事が出来なかった。
そして、さよは瞳から涙が溢れた。
イルゼは、胸の内から憎悪が溢れそうになるのを耐えるのに必死だった。
何故なら、もしかしたらフェイがその被害者である可能性が高いからだ。
そして、イルゼは聞いた。

「なら、なんで矢部先生は麻帆良に居たんだ?それに…今考えるとおかしいぜ。何であんなに若いんだよ。じいちゃんと同い年なんだろ?」

イルゼの言葉に、さよと木乃香、キヨとレオルモンも近右衛門を見つめた。

「それは…彼奴が受けた実験の種類によるんじゃ」

「実験の種類?」

木乃香が聞いた。

「うむ、当時は戦争を魔法世界でしておってな。その為に軍事目的で幾つかの研究が盛んになったのじゃ」

「どういう事?」

さよの質問に、近右衛門は答えた。

「大きく分けて三つじゃ。攻撃、防御、耐久。攻撃は即ち戦力の増強じゃ。デジモンの召還だけではない。魔法使いを戦闘機械の様に意思を消し去り、戦
闘力を極めて高い存在にする研究もあった。そして、防御とは結界の研究じゃ。国を護る為に効率の良い結界の張り方などじゃ…。これにも多大な犠牲
が出た。結界や封印は、人を生贄にする事で究極の力を発揮するのじゃ。その為に…」

近右衛門の話に、イルゼ達は嫌気が差しそうだった。
エヴァンジェリンも、ここまで酷い事とは思っていなかった。
戦争では、人を使い捨てにする事など当然の様にある。
だが、これでは使い捨てとは言え、名誉と言う尊厳が与えられるだけマシではないか。
それも、敵ならいざ知らず、味方を実験のモルモットの様にするなど正気の沙汰ではない。
だが、そこまでならエヴァンジェリンも理解出来ない事は無かった。
だが、それを国自体が率先してするなど狂気と言ってもいい。
生贄は古い風習にもあるが、それはどれも人では敵わない存在や天災に対してだ。
同じ人を相手にそんな真似をするなど、それは最早人の所業ではない。
そして、近右衛門が話を続けた。

「そして、彼奴が受けたのは堕落の魔法の一つじゃ。グール、吸血鬼とは違う。『生ける屍(リビングデッド)』じゃ」

「なんだと!?」

エヴァンジェリンは今度こそ耐え切れずに爆発した。

「そんな馬鹿な事があるか!!それは禁断第二魔法ではないか!!」

「禁断第二魔法?」

さよが首を傾げると、木乃香はエヴァンジェリンに教わった事を話した。
五つの禁断の魔法の一つである『死者の蘇生』。
世界に置けるエネルギーが増加してしまい、世界が滅ぶ可能性すらある禁忌の魔法だ。

「言ったじゃろ?『生ける屍(リビングデッド)』じゃと」

その言葉に、エヴァンジェリンは「まさか!?」と愕然とした。

「死後に生き続ける者ではなく…。馬鹿な!!矢部の奴はどうみても生者だったぞ!!」

エヴァンジェリンの言葉に「いいや」と近右衛門が首を横に振った。

「彼奴は死体でありながら動き続けていたのじゃよ」

「そんな筈は無い!!死体ならば下手をすれば一般人にだって分かる筈だ。それも、私の目を欺ける幻術などありえんぞ!!」

エヴァンジェリンの激昂に近右衛門は首を横に振った。

「それが、彼奴に掛けられた魔法なのじゃよ。死体を動かすだけならば幾らでも方法はある。だが、どれも映画のゾンビの様な姿になったり、意思を持た
なかったりするのが責の山じゃったろうな」

勿体付けた近右衛門の言い方にエヴァンジェリンは苛立たしげに舌打ちした。

「なら、矢部は何なんだ!!」

すると、近右衛門が答えた。

「彼奴は完全なリビングデッドじゃ。動く死体ではない。生ける屍じゃ。生者と見分けもつかない程に綺麗な死体。そして、魂が定着させる」

「ふざけるな!!魂の定着は死者蘇生の域だろ!!」

エヴァンジェリンの言葉に、近右衛門は頷いた。

「確かにのう。じゃが、彼奴が復活したのは魂だけじゃ。常に死体であることを自覚しているが故に恐ろしい責め苦じゃ。崩壊は始まっておった。じゃが、
儂の為に彼奴は現世に留まってくれておったのじゃ…。彼奴の魂が復活した日、彼奴が収容されておった研究施設は崩壊した。当然じゃよ。魂だけでも
復活した瞬間に世界は復活した分のエネルギーを消滅させようとする。反物質をしっておるか?」

近右衛門が問い掛けるように一同を見渡した。
そして、キヨが答えた。

「たしか、質量とスピンが全く同じで、構成する素粒子の電荷などが全く逆の性質を持つ反粒子によって組成される物質の事だったかしら?」

その言葉に、「満点の正解ですじゃ、キヨ殿」と近右衛門は頷いた。

「反物質は、凄まじいエネルギーを誇る。じゃが、すぐに対消滅を起してしまうのじゃ。その際に、凄まじいエネルギーを発生させる。現在はセルン…欧州
原子核研究機構において盛んに研究されておるのじゃが、反物質が爆発すれば、1945年に広島と長崎に落ちた原爆なぞ比較にもならぬ破壊力を持つ
爆弾となってしまうのじゃ…」

「原爆以上!?」

それは初耳だったのか、キヨは眼を見開いた。

「原爆?」

すると、さよが首を傾げた。
彼女は終戦より前に裏鬼門に封印されてしまった為に知らないのだ。

「街一つを飲み込み、その後数年間も放射能と言う恐ろしき災厄を振りまいた爆弾じゃ」

「な!?」

さよは言葉を失い唖然としてしまった。

「話を戻そうかの。矢部の復活は、エントロピーの増大を引き起こしたのじゃ。生命が取り入れるネゲントロピー以上にエントロピーが増大してしまった。
故に、そのエネルギーの消滅は、凄まじい破壊の力となった。当時、ティファニーの死体だけが発見された。
恐らく、矢部の実験以前に殺されたのじゃろう…」

そして、近右衛門は怒りに震え、憎悪を瞳に宿し、唇を血が出るほどに噛み締めた。

「陵辱され…、薬を打たれ…、地獄の如き責め苦を受けた後があった…。じゃが…、儂は怒り以上に絶望してしまった…。酷く損壊したティファニーの死
体が、共同墓地の様な場所に発見され、矢部と二人の子。名前は知らんかった…。子供が生まれたのは知っておったのじゃが…。儂は愚かじゃった。
本当に大切な者を蔑ろにして…。二人の死体は見つからなかった。じゃが、矢部は戻って来た。60年になっての事じゃ…。さよちゃんの事を教えてくれ
て、儂を助けてくれたんじゃ…。もう、逝きたい筈じゃろうに…」

近右衛門は涙を流しながら言った。
さよも、声無き絶叫をしながら顔を両手で覆って嘆いた。
友の悲劇を。
だが、イルゼはそれ以上に恐ろしい考えに捕われた。

「子供は…?」

イルゼの言葉に、近右衛門は首を横に振った。

「わからんのじゃ…。矢部の奴にも聞かなかった。聞けるはずがなかったんじゃ…」

近右衛門の言葉に、イルゼは親友の顔を思い出していた。

「まさか…フェイは…。いや…」

そこまで言って首を横に振った。
同姓同名かもしれない。
何よりも、もう何十年も前の話しなのだ。
フェイはどう見てもイルゼと同い年である。
だが、矢部が何十年も同じ姿だと聞き、イルゼは最悪の想像をしてしまっていた。

「フェイに聞くのが一番早いだろうがな…」

エヴァンジェリンの言葉に、イルゼは首を横に振った。

「違う…そんな筈ない…。アイツが死体だなんて事…ある訳ねぇよ…。そうだ、多分同姓同名なだけだ」

そう言うと、それ以上は何も言わなかった。
木乃香とエヴァンジェリンも何も言わなかった。
イルゼは今、非常に不安定になってしまっているのを感じたからだ。
そして、近右衛門が唐突に思い出したように言った。

「そう言えば…、彼奴が調査していた事件を儂と矢部は共に学園長になった後も調査を独自にしておったのじゃが…」

「何か気になる事でもあるのか?」

近右衛門の言葉に、エヴァンジェリンは眉を顰めた。

「うむ…。『王竜伝説』と言う謎の文献があったのじゃ。中身は殆ど燃やされてしまっておったのじゃが…、題名だけは読めたのじゃ…」

「『王竜伝説』?」

エヴァンジェリンが首を傾げると、近右衛門は「儂にもサッパリじゃ」と首を横に振った。

「ただ、読めた範囲では、持つ者に無双の力を与えるとあった。それ以外はわからん」

その言葉に、全員が首を傾げた。

「しかし、ならばオーガモンのデジタマは…」

レオルモンは悲壮的な表情で俯いた。

「わからぬ…。矢部は何も言ってはくれなかったのじゃ…」

近右衛門はすまなそうに言った。
そして、キヨはレオルモンに頭を下げた。

「ごめんなさい…。貴方の大切なデジタマを…」

だが、キヨにレオルモンは頭を上げるよう望んだ。

「貴女は悪くない。それに、そこまで絶望的ではない。何時か、矢部殿を解放する日が来る。ピエモンを倒せる力を得たならば。開放された矢部殿に聞け
ば何かが分かるかもしれない。だから、自分を責めないで欲しい…」

レオルモンの言葉に、キヨは涙を一滴零して「ごめんなさい…。ありがとうね」と言った。
そして、エヴァンジェリンがキヨに向け直った。

「何にしろ、こちらが聞きたい事は以上だ」

エヴァンジェリンの言葉に、キヨは「そう」と頷いて近右衛門に向き直った。

「近右衛門さん」

「はい」

キヨに呼び掛けられ、近右衛門は背筋を伸ばした。

「初めて会うのにこのような事を頼むのは心苦しいのだけど…」

キヨは言い難そうに言った。
そして、近右衛門は首を横に振った。

「いいえ、何でも仰って下さい。儂…いえ、私に出来ることならばなんなりと」

近右衛門の言葉に、キヨは柔らかく微笑んだ。

「さよと…レオルモンをお願いしてもいいでしょうか」

「え?」

近右衛門は目を丸くした。
そして、さよもキヨを驚いてみた。

「おばあちゃん?」

「キヨ殿?」

レオルモンも首を傾げながら聞いた。
すると、キヨはさよとレオルモンを悲しげに見つめると口を開いた。

「私が残っていられるのは後数刻も無いでしょう。私の唯一の心残りは二人の事。二人に幸せを掴んで欲しい。さよもレオルモンも、私にとって大切な家
族なのよ。だけど、二人は辛い人生を歩ませてしまった…。助ける事も出来ないで…。だから…近右衛門さん」

「………」

キヨに見つめられ、近右衛門は視線をずらさずに真摯に見返した。

「さよをお願いします。そして、レオルモンも。こんな事、お願いするなんて貴方に重しを付けてしまうかも知れないわ。でも、レオルモンをデジタルワール
ドに帰らせてあげたい…。さよを…幸せにしてあげたい…。我侭なのは分かっているの…。私には出来なかった」

その時、キヨの体が唐突に光を放ち始めた。

「おばあちゃん!?」

さよは眼を見開いて叫んだ。

「な!?」

レオルモンも慌てて立ち上がりキヨを見た。

「もう…お別れが来てしまったみたいね…」

キヨの言葉に、さよとレオルモンは涙を溢れさせた。

「やだ…おばあちゃん!!」

「い…逝かないで…逝かないでくれ!!キヨ殿!!!」

さよとレオルモンの叫びが木霊する。
イルゼと木乃香はただ悲しくて仕方が無くなった。
別れ――。
その悲しさが、木乃香とイルゼにも分かってしまった。
ただ、見守る事しか出来ない。

「お願いします…。さよとレオルモンを…」

徐々に、キヨの姿が薄れていく。
そして、声もどこか遠くから聞こえる様になってしまった。
近右衛門は無意識に立ち上がっていた。

「約束…約束します!!さよちゃんを護ります!!レオルモンも、必ずや…必ずやデジタルワールドに送り届けます!!!だから…だから…」

そこまでだった、近右衛門も言葉が発せられなくなってしまった。

「おばあちゃん!!」

さよは縋り付こうと手を伸ばすが、キヨに触れる事は出来ない。

「キヨ殿!!」

レオルモンも幼子の様にキヨに縋ろうと虚空に手を伸ばす。
だが、キヨの体は消えていくだけだった。
しかし、キヨは近右衛門に微笑みかけた。

『ありがとう…』

そして、エヴァンジェリンが手を伸ばした。
エヴァンジェリンは学園外であるさよの家に来れたのは、既に封印が力を為していないからだ。
究極魔法である『管理人の召還』、それは強力な魔法契約だ。
それ以外の、即ち学園結界との魔法契約は耐え切れなかったのだ。
故に、闘いの後に新月だと言うのに結界を張れた。
封印が起動していた筈なのに。
だが、近右衛門は封印を直す気は無かった。
エヴァンジェリンと相談し、エヴァンジェリンが力を隠していればいいのだと言う結論に至ったのだ。
封印が解けているかどうか、それが分かるのは余程の熟練者程度なものだ。
麻帆良学園の教師の中でも、神多羅木と葛葉にしか分からない。
その二人も、特に何も言わなかった。
葛葉は、近右衛門の決定に従うのみであり、神多羅木はエヴァンジェリンが開放されようが興味は無かったのだ。
そして、二人とも近右衛門を尊敬していた。
歴戦の英傑として、その実力もピエモンとの戦いで実感し、逆らう気など無かったのだ。
二人は決して他言しないと約束した。
そして、エヴァンジェリンは言った。

「3秒だ。手だけだぞ」

そう言った瞬間、キヨの体の両手の部分だけが光ではなく、まるで実体のような姿になった。
そして、キヨはさよとレオルモンの頭を撫でた。
そして、二人に言った。

『愛しているわ。幸せになってね、二人とも』

そして、手も光の粒子となって完全にキヨの魂が消え去る寸前に、キヨは言った。

――ありがとう、心優しい吸血鬼さん。

その言葉に、エヴァンジェリンは俯いたまま呟くように言った。

「安心して…逝け…」

最後に、微かに聞こえた。

『さようなら』

そのまま、レオルモンとさよが抱き合うように大声で泣くのを、木乃香とイルゼも涙を溢れさせ、近右衛門とエヴァンジェリンは顔を俯かせて見守った。
出会いが有れば別れも有る。
それは避けられない事実だ。
それでも、人は前を向いて歩くべきモノだ。
イルゼと木乃香は、また一歩前進した。
確りと、踏み締める様に、ゆっくりと。








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